2012/10/14

SpotifyがSamsungのスマートTVで利用できるようになることの意味



以前からこのブログでも紹介しているスウェーデン発の音楽ストリーミングサービスSpotify。先日Samsungと提携し、SpotifyはPCやスマートフォン、タブレットだけでなく、ついにスマートTVでもアクセスできるようになりました。

今のところイギリス、デンマーク、フランス、ドイツ、スペイン、スウェーデンを含むヨーロッパ12か国でのみ利用可能。これらの地域で販売されているSamsungのスマートTV2012EシリーズモデルでSpotifyのアプリをダウンロードすれば、1800万曲近くあるカタログの中から音楽を自由に聴けるようになります。基本的にはSpotifyのプレミアムユーザー(月額約1000円でPC+モバイルで聴き放題)しか利用できませんが、新規ユーザーに関しては、一定期間トライアルすることが可能になるようです。また、年内には他のSamsung スマートTVモデルやBlu-rayプレーヤー、ホームシアターシステムでもSpotifyが利用できるようになるとのこと。

いち早くSpotifyと手を組んだということは、Samsungに先進的なイメージを与えることになりますし、他社との差別化を図るいいチャンスです。



このニュースから見えてくることは【モノ提供からコト(体験)提供へ】という流れがこれから更に加速していく、ということなのではないでしょうか。当たり前のことですが、もうテレビは、高画質であることがプレミアムな価値ではなくなっています。液晶パネル生産に韓国や中国も加わったことが過剰生産に繋がり、価格がどんどん落ちているのが現状です。そんなモノ視点でのテレビ開発からコト視点でのテレビ開発が必要になってきている中、SamsungがSpotifyと手を組む戦略を取ったのはよく理解できます。

テレビは長い間、放送局の配信するニュース番組やバラエティ番組、ドラマなどを流すためのホームメディアとして活躍してきました。しかしテレビをウェブに繋げられるようになった今、スマートフォンやタブレットと似たような体験をユーザーに提供することが可能になりました。その結果、今アメリカでウェブのストリーミングビデオを見るために最も利用されているメディアは、PCやタブレットではなく、なんとテレビだそうです。

また、一番人気のコンテンツ配信サービスは、ドラマや映画の豊富なセレクションを揃えているNetflixとのこと(消費者トラッキングサービスNPDの調査結果より)。

モバイルデバイスと比べると、テレビのスクリーンのほうが大きいし、音響システムも良い。また、家族や友人と時間を共有しながらストリーミングで映画やドラマを楽しむのであれば、私もテレビを選択すると思います。(この前、アメリカドラマの「24」が突然見たくなったのですが、その時家にテレビが無かったため、Huluのトライアルを利用してMacbookで見ました。非常に中毒性の高いドラマなので外出先でもスマホを使って見ていたのですが、やっぱりどうしても迫力にかけます…。メディアを選べるのであれば、やっぱりテレビで観賞したいです。)音楽サービスについても同様で、最高の音質で家族や友人と一緒に音楽を楽しみたい場合は、テレビが最も利便性の高いメディアなのかもしれません。

今まで、PCやモバイルデバイスをわざわざテレビに繋いでSpotifyを利用していた人たちにとっては、テレビを操作するだけで音楽が聴けるというのは嬉しいニュース。また、今までSpotifyを使ったことがない人も、PCやモバイルより音響環境の優れているテレビでトライアルしたほうが、もしかするとSpotifyの魅力を感じやすくなるかもしれません(ホームシアターシステムなら尚更)。もちろん、Samsung機器でのアプリ操作がどれだけスムーズにいくか、というのも重要なポイントかとは思いますが。

こう考えると、テレビというのは今までのように、決まったコンテンツを決まった時間にしか流さないメディアではなく、コンテンツを選ばないオールマイティメディアに進化する必要があるのではないか、と思います。日本の放送局の番組コンテンツが劣化してきていると言われる中、日本のテレビメーカーもSamsungを超えるような先進的な姿勢を見せて、「コト発想」で新しいことにチャレンジして頂きたいです。



参考リンク: