2012/08/19

あなたの名前がググられた時の検索結果をコントロールする方法が、地味にクリエイティブな件。



あなたの第一印象は検索結果に左右される?


初めて会う人の名前を、事前にグーグルで検索してみたことってありませんか?
実は雇用者の80%、独身者の50%が新しい人に会う前に、その人の名前をググっているそうです。あなたの第一印象は、グーグルの検索結果に左右されると言っても過言ではありません。そんな検索結果には、もしかするとあなたの恥ずかしい過去や、掘り起こされたくない写真なんかも出てくるかも?しかし残念ながら、あなたがその結果をコントロールすることはそう簡単にはできません。
例えばこんな写真が検索結果に出るかも…。




「自分に関するネット上の情報をすべて削除したい」


今年の7月にスウェーデン人約1000人に対して行われたアンケート調査の結果によると、10人に1人、そして若者(15~22歳)の場合3人に1人が、「ネット上にある自分の情報を見られるのは気まずい」と感じているとのこと。ヨーロッパに住む約3000人を対象に2011年3月に実施された調査では、2人に1人が「できることなら、自分に関するネット上の情報をすべて削除したい」と答え、3人に1人は「将来の就職先に見られたくない情報をシェアしたことがある」と回答したそうです。



あなたのスポンサード・リンクを作ってみよう!


この調査結果に共感してしまうそんなあなたに、あのウィルス対策ソフトで有名なノートンから素敵なサービスが始まりました!その名も「Norton Top Search Result」。企画に携わった広告エージェンシーはNaked Swedenです。

このサービスを利用すると、あなたの名前が誰かに検索された時に表示される検索結果ページのトップに、あなたが作成したスポンサード・リンク(薄黄色の網掛け部分)を用意することができるんです。コントロールできるスペースはココ:


自分を宣伝するためのサイト(例えば個人ブログやLinkedInなど)へのリンクを解説文付きでこのスペース内に表示させる、という形になります。私も仮に作ってみました。これはプレビュー・モード:


仕組みとしては、ノートンのシマンテック社が私の名前をGoogle AdWordsとして登録することになり、もし私が作った広告を誰かがクリックしたら、そのクリック数に応じてシマンテック社は課金される、ということになるんだと思います。ということでグーグルにとってはちょぴっと美味しい企画?ちなみに、この広告を作成するにはFacebook認証が必要なので、なりすましはできませんよ!オバマとかビル・ゲイツとか勝手に名乗ることはできません。でも、変なことを企む人が出てきそうではありますが…。こちらがサービス紹介ビデオ:




ネット空間を自分の手でコントロールする


このデジタルキャンペーンはウィルス対策と直接的な関係はありませんが、ネット上で私たちがいかに無防備でいるか、そして起こりうるリスクを過小評価しているか、ということを改めて考えさせられるような気がします。また、「ネットでの被害を最小限に抑えるには、ネット空間をできる限り自分の手でコントロールすることが大事ですよ」というメッセージもこのキャンペーンに含まれているのではないでしょうか。

ウィルス対策ソフトの宣伝にありがちな、過度な煽り系じゃないところにも、好感が持てるキャンペーンです。ちなみに煽り系のいい例を見つけました。そこそこ効き目はありますが、自分事として捉えられるのはやっぱりノートンの施策のほうだと思います。
この画像をクリックしてぜひウィルス疑似体験してみてください。

私の作った広告は、ただいま審査を受けているところなので、まだ検索結果ページには表示されません。恐らく、何らかの形でその広告がノートン宣伝用のものだということが判明する仕組みになっているのでしょうが、そうすることで検索した本人もノートンのサービスについて知ることになり、「じゃぁ自分も登録してみようかな」みたいな感じで、ジワジワと認知が広がっていくんでしょうね。


「広告に表現は必要ない。広告は情報だ」


そんなグーグルの言葉が、電通・京井良彦さんの「ロングエンゲージメント」という本に紹介されていました。グーグルの検索連動広告(Adwords)の手法が従来の広告に大きな衝撃を与えた、ということでこんなことを述べています:

検索窓をくぐったユーザーは、既にその検索ワードにインタレスト(興味)を持っているということがわかっています。したがって、わざわざアテンションを獲得するための表現などは必要ありません。(…)これまで広告が活用してきた意識変容モデルや購買行動モデルにある「まずはアテンションを獲得し、インタレストを持ってもらう」というプロセスを、一気に飛び越えてしまったのです… p.47
今回ご紹介したノートンのデジタルキャンペーンは、Naked Swedenという広告エージェンシー発のアイディアではあるものの、アテンション獲得を目的としたクリエイティブ表現というのは重要視されておらず、インタレストありきのキャンペーンになっていて、むしろエージェンシーの仕事としてはかなり地味なものだと思います。

グーグルの言うように、Adwordsそのものには広告にありがちな派手さ
というのは全くありませんし、純粋に検索者のインタレストをベースにした情報を表示しているだけ。そんなAdwordsを活用したこのキャンペーンは、見た目は確かにとっても地味ではあるのですが、背景にある生活者インサイトやアイディア、そして仕組みそのものにはエージェンシーならではのクリエイティビティがちゃんと存在していると思います。新しい広告コミュニケーションの形を学ぶことができたという意味では、個人的にはとても勉強になるキャンペーンでした。


オマケ。


オマケとして、数年前に話題になったGoogle Adwords面白活用例をご紹介。とある就活中の男が、一緒に働きたいクリエイティブ・ディレクターの名前をAdwordsに登録。著名な彼らは自分の評判などを気にして時々自分たちの名前をググっているだろう、という想定のもと、「自分の名前をググるのも楽しいけど、僕を雇うことも楽しいよ!」というコピー付きの広告を彼らの名前の検索結果ページに用意しました。

これも非常に地味な試みではあるものの、結果、5人中4人が面接に応じてくれ、最終的に2社からオファーを受けたそうです。ちなみにこの就活にかかった費用はたったの6ドルクリエイティビティというのは、見た目の表現だけでなく、その裏側にあるストーリーやアイディアや仕組みがとても重要だということを思い知らされますね。





参考リンク:
Norton Top Search
Norton vill hitta till känslorna - dagensmedia.se 8/15/2012
Vill skydda ditt rykte på nätet - resume 8/14/2012