2012/03/09

スウェーデン流・公共放送の受信料支払率を上げる方法をNHKも見習おう!

思わず感動して涙が出そうになったコマーシャルを発見しました。

Creative Swedish Agencies 2010という本が今手元にあり、Draft FCBという今まで聞いたことのない広告エージェンシーの4年前のケーススタディを読んでいたのですが、とても興味が湧いたので彼らが製作したCMをyoutubeで見てみたんです。そしたらあまりにも感動しちゃいまして、これはシェアしたい!と思ってしまったので、ぜひご紹介させてください。(あ、でもあまり期待されすぎても困るので、とりあえず期待しないで下さい。)



公共放送の受信料支払率を上げよ!

スウェーデンにはRadiotjänstという、テレビとラジオの公共放送の受信料を徴収する組織があります。放送を受信しているのは約400万世帯で、そのうち350万世帯(87%)が受信料を支払っているとのこと。既に高い数字だとは思いますが、更に支払い率を上げるために、Radiotjänstは毎年プロダクション会社にCMを作ってもらっていたそうです。ターゲットは、受信料を払っていない人々。しかし、それらのCMは意図があまり明確ではなく、当時コミュニケーション部門のトップを務めていたPer Leander氏は不満に感じていました。

そこで、彼は広告エージェンシーを雇うことを社内に提案しました。けれども「そんなの不要、お金の無駄だ」と否定的な意見ばかり。しかしLeander氏の仕事は、より多くの受信世帯にお金を払ってもらうよう説得すること。彼は自分の意志を曲げることなく、反対を押し切ってDraft FCBというエージェンシーと組むことにしました。


受信料を支払っている人々へ感謝の気持ち。

Draft FCBが出した提案は、今までRadiotjänstが作ってきたCMとは全く異なる切り口でした。受信料未払いの人に直接訴えかけるのではなく、受信料をちゃんと払ってくれている人々に感謝の気持ちを伝える、というアイディアを持ち出してきたのです。そうすれば、未払いの人は仲間外れにされていると感じるだろう、と間接的に彼らに訴えかける意図も含め。

この提案に対し、Radiotjänst社内の反応は懐疑的でネガティブなものでした。けれどもLeander氏はDraft FCBの案に非常に共感し、もし実現できないのならこのポジションに就いている意味が無い、とまで考えていたそうです。彼は最終的に社内の人間を説得することに成功し、CMが実現されました。完成したものが、こちら。


曲のテーマ:
受信料を払ってくれてありがとう!

図書館編(個人的に一番好き):




映画館編(関係者は数人だけかと思いきや…):




スーパー編:




プール編:




広場編(一番大規模!):




私は最初に図書館のビデオを見たのですが、とてもキャッチーなメロディーで、なんだか物凄く感動しちゃいました…。(ちなみに冒頭は、「あなたは◯◯さんですか?」で始まり、あとの歌詞は、「受信料を払ってくれてありがとう!」ぐらいしか言ってないと思います。笑)

この企画を実施後、受信料は約4万世帯分増え、更にカンヌ国際広告祭で3つの賞を受賞したそうです。フラッシュ・モブ(公共の場で事前予告無しで突飛なイベントを行うこと)自体は、今はもうそんなに新鮮味が無いかもしれませんが、それでも私はグッときてしまいました。そしてやっぱり公共放送がこれをCMとして流したという事実には、驚きが隠せません。NHKではちょっと信じ難いですね。

かなり低予算の中でこのアイディアをひねり出したDraft FCBは素晴らしいと思いますが、そもそもLeander氏の熱い気持ちが無ければ、このCMは実現できなかったでしょうね。何十年も続いている公共放送であれば、保守的且つ頭の固くて薄い長老もいたりするでしょうし(勝手なイメージですが)、よく説得しましたよ。こんな感動するCMを作ってくれて、ありがとう!と伝えたくなります。そして、受信料も払いたくなります(スウェーデン語をマスターできたら)。

NHKもスウェーデンを見習って、受信料徴収頑張ってください。