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●ここ数十年の間、日本の原子力産業は国民に対して原子力の安全性と必要性を訴えるために、膨大な資源を費やしてきた:
・もはや観光名所となっている、空想の世界を豪華に再現した各PR施設(詳細は下記参照)
・官僚主導による、原発の安全性を伝えるために念入りに作られた広告キャンペーン
・政治家主導による、原子力に対して親近感を抱いてもらうための文言を含んだ教科書の導入
●結果は、日本の原発に対する「安全神話」の浸透。
・もはや観光名所となっている、空想の世界を豪華に再現した各PR施設(詳細は下記参照)
・官僚主導による、原発の安全性を伝えるために念入りに作られた広告キャンペーン
・政治家主導による、原子力に対して親近感を抱いてもらうための文言を含んだ教科書の導入
●結果は、日本の原発に対する「安全神話」の浸透。
原爆で唯一攻撃を受けた国であるにも関わらず、スリーマイル島やチェルノブイリの事故に対する反響がほとんど見受けられなかった。それだけ日本人の原子力に対する許容範囲が広い理由は、この「安全神話」の存在が大きいだろう。福島原発事故においても、日本よりもヨーロッパやアメリカのほうが反発が強かった。
●この「安全神話」があったからこそ、万が一の事態に対処するための安全装備やロボット技術等の検討・導入が全く進んでいなかった。
●この「安全神話」があったからこそ、万が一の事態に対処するための安全装備やロボット技術等の検討・導入が全く進んでいなかった。
IAEA会議にて海江田経産相の言葉:「日本の原発技術に対する不合理で過剰な信頼があったことは確かである。その結果、安全対策を取るための土台作りが出来ていなかった」
●3.11直後、政府や東電は原発事故への初期対応に手こずった。
●3.11直後、政府や東電は原発事故への初期対応に手こずった。
万が一の事故に対処するための基本装備が欠けており、初めは海外の協力を拒んでいたが結局は助けを求める結果となった。しかし日本において緊急時用ロボットの技術開発が行われていなかったことは非常に不思議である。
●ロボット技術においては世界のリーダーである日本。
●ロボット技術においては世界のリーダーである日本。
走って歌って踊ってバイオリンまで弾ける二足歩行ロボットが開発されているというのに、福島原発の事故に対処できるロボットの存在が見当たらないのはなぜなのか?
●原子力事業者でさえも「安全神話」を信じきっていた。
●原子力事業者でさえも「安全神話」を信じきっていた。
東大の元学長でありエンジニアでもある吉川氏の言葉:
「事業者は、事故が起きることを前提としたロボット技術は不要だと言っていた。逆に導入することで(国民に)恐怖を煽る危険性があるため、ロボットは導入できない、と。」
「安全神話は決して中身が空っぽのスローガンではなかった。新しい技術の導入を拒むマインドセットを作り上げる原因となった。」
●広島の原爆の威力を見た中曽根元首相は「これからは原子力の時代だ」と悟った。
●広島の原爆の威力を見た中曽根元首相は「これからは原子力の時代だ」と悟った。
日本のエネルギー資源不足が第二次世界大戦への参加、そして敗北の原因となったことから、中曽根氏と似た考えを持った日本人らは、これからは原子力が日本のエネルギー自給率を上げるカギになる、と確信した。
●チェルノブイリ原発事故の後、原子力産業は日本人の「安全神話」を崩さないための対策の一つとして、原発に併設させる形でPR施設を新設または改装していった。
●チェルノブイリ原発事故の後、原子力産業は日本人の「安全神話」を崩さないための対策の一つとして、原発に併設させる形でPR施設を新設または改装していった。
天理大学の人類学者である住原氏の言葉:
「チェルノブイリ前のPR施設は技術的な話に興味のある成人男性をターゲットにしており、作業着を着た男性ガイドが主にパネル展示で構成された展示室を案内していた。しかしチェルノブイリ後には、これらの施設は原発や放射能に不安を抱き始めた若い母親を対象に、手の込んだテーマパークへと塗り替えられていった。ガイドとしては出産適齢期の若い女性が雇われ、彼女らは訪問者に安心感を与える効果をもたらした。」
●石川県の志賀原子力発電所に併設されているPR施設では、「不思議の国のアリス」を利用して原発の仕組みについて解説している。
●石川県の志賀原子力発電所に併設されているPR施設では、「不思議の国のアリス」を利用して原発の仕組みについて解説している。
芋虫は放射能に関するアリスの不安を取り除いてくれ、またチェシャー猫はエネルギー源について教えてくれる。アリスは穴の中に飛び込む代わりに、キャンディーを食べて小さくなり、志賀原発の模型に入り込む。
●原子力産業は自ら作り上げた「安全神話」に絡まってしまった。
●原子力産業は自ら作り上げた「安全神話」に絡まってしまった。
「tsunami」という言葉を世界に広めた国である日本が、福島第一原発及びその他の施設を津波から守るための安全対策を今までほとんど検討していなかった。
●ドードー鳥も芋虫も、津波のことをアリスには教えてくれなかった。
●ドードー鳥も芋虫も、津波のことをアリスには教えてくれなかった。
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この記事で「安全神話」についての具体的な裏事情がよく見えてきました。ところでこれを読んでいると、日本国民が「無知な被害者」扱いをされている印象を少し受けてしまうのですが、本当にそうだったのかな?とちょっと不思議に思ってしまいます。
『ダメ情報の見分けかた』で飯田泰之氏はこう述べています:
従来のメディア・リテラシー論は、市民を「無知」な状態から「賢い」状態にしようという前提で話されている。しかし基本的に人は「見たいものを見る」。これまで人々が「メディア・リテラシーを発揮してこなかった」のであれば、それは決して「市民」が無知だからではなく、そのほうが「合理的な選択」になるような状況があったからだ。
飯田氏風に言い換えると、3.11前は大多数の人にとって、原発に関するリテラシーを身に付ける私的インセンティブ(動機)が無かったのかもしれません。原発はリスクを伴うものだということが頭の片隅にあったとしても、ほぼ完璧に出来上がっていた原発の「安全神話」を崩すための行動のコストを考えると、まぁ騒がずに黙っていたほうがいいのかな、と私たちは思っていたのかもしれません。
私自身も、なんとなく原発は危険なものだ、ということは理解していましたし、数年前に反原発イベントにも(傍観者レベルで)参加したことはありますが、大きく声を上げるということはせず「合理的な選択」として原発のリスクには目を瞑っていました。実際、仕事でも原発に少しだけ関わったことはあるのですが、後ろめたさを感じつつも、「合理的な選択」としてその仕事に最後まで携わりました。
3.11が起きてからは多くの人にとって「原発に関するリテラシーを身に付ける私的インセンティブ(動機)」が大きく膨らんだことと思います。ネットメディアを活用して多様な意見や議論に目を通し、これからの新たな「合理的な選択」を一人ひとりが考えていく必要があるのでしょう。
私自身も、なんとなく原発は危険なものだ、ということは理解していましたし、数年前に反原発イベントにも(傍観者レベルで)参加したことはありますが、大きく声を上げるということはせず「合理的な選択」として原発のリスクには目を瞑っていました。実際、仕事でも原発に少しだけ関わったことはあるのですが、後ろめたさを感じつつも、「合理的な選択」としてその仕事に最後まで携わりました。
3.11が起きてからは多くの人にとって「原発に関するリテラシーを身に付ける私的インセンティブ(動機)」が大きく膨らんだことと思います。ネットメディアを活用して多様な意見や議論に目を通し、これからの新たな「合理的な選択」を一人ひとりが考えていく必要があるのでしょう。