2012/02/28

「プログラミングの知識を持つ人材が今後重要に」インタビュー#1: CP+B Europe 後編

前編中編に続き、CP+B Europeのエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターであるグスタフ・マートナーさんインタビュー、やっと後編です。
・今後のキャリアについてどう考えているのか?
・スウェーデンの広告業界が抱えている課題とは?
・広告業界についてどんな未来を予想している?
などなど、短くまとめてみました。



今後のキャリアについて、どのように考えていますか?
よくわからないな。そもそも人生を仕切るって、とても難しいことだと思う。だから自分に訪れたチャンスはちゃんと活かしたいなとは思うよ。まぁ、新しい知識を得られるのであれば何をしてても構わないかな。


仕事のモチベーションを上げるために大切なことは?
僕や僕のチームが新しい知識を得られるような仕事をすること。キャンペーンを実施した後に、なぜそれが驚くほど効果的だったのか、あるいは効果的ではなかったのかを分析するプロセスが、ユニークな知識を得るきっかけになるんだよ。


スウェーデンの広告業界が今抱えている課題は何ですか?
他のみんなと同じチャレンジに立ち向かってるよ。
僕たちは制作(プロダクション)で沢山お金を稼いできた。もちろん、ビッグ・アイディアを思いつくことは、広告を作る上で重要なことだ。けど広告エージェンシーが儲けを多く出せるのは制作の部分。アイディアだけではそんなにお金にならない。今後色んな会社がスマートな制作システムを作っていけばいくほど、制作からの儲けが伝統的な広告エージェンシーから奪われていくだろう。彼らは、収益を保つのが難しくなると思う。と同時に、ブランドを抱える企業はこれからマーケティングにもっと投資をしていくだろう。そのシェアを少しでも多く掴むためには、エージェンシーはもっとシステムやテクノロジー、データに投資をする必要がある


スウェーデンの広告業界の未来についてどう感じますか?
広告キャンペーンを作る際は、プログラマーやプログラミングの知識を持っている人材がもっと関わってくると思う。広告にとって今後は「テクノロジー」が重要なキーワードになるからね。


CP+B Europeにはプログラマーは沢山いるんですか?
うん。僕も元々プログラマーだしね。だからプログラミングに興味のあるクリエイティブ、もしくはクリエイティビティに興味のあるプログラマーが僕は好きだよ!



いかがでしたでしょうか。

私が興味深いなぁと思った部分は2箇所あります。まず一つ目は、

プロダクションが利益を生む

という部分。これは、確かにそうなんでしょうね。
けれども昨日私が取材してきたサーチ&サーチアリエールのFashion Shootキャンペーンなどを担当)は、プロダクションを完全に外部に任せ、クライアントのコンサルティング(リサーチからコミュニケーション戦略の構築まで)にフォーカスしているエージェンシーで、効率良くやっているようでした。25人という小規模なエージェンシーだからこそ可能なことなんでしょうけど。

プロダクションチームが組織内(インハウス)に存在するエージェンシーであれ、サーチ&サーチのように外部委託するようなエージェンシーであれ、その組織あるいは個人が意識すべきことは以下の二点のように感じます:

クライアントに請求する費用(特に測ることの難しいコンサル費)が妥当な数字なのかどうか。その数字を請求するだけの価値をクライアントに提供できているかどうか

②営業もプランナーもクリエイティブも全員デジタルプロダクションをある程度理解できているかどうか。(ちなみにサーチ&サーチの全スタッフはデジタルの知識を持っていることが大前提なので、「Digital」という単語の入った職種はありません。)

…二点とも当たり前のことではありますが、自分に言い聞かせる意味でも書いてみました。



二つ目の興味深かった点は、

プログラミングの知識を持つ人材が必要

という部分。特に、
プログラミングに興味のあるクリエイティブ、もしくはクリエイティビティに興味のあるプログラマーが僕は好きだよ!(※ここでいう「クリエイティブ」とは職種のことです) 
というグスタフさんの言葉には、考えさせられるものがあります。このような人材であれば、必ずしも広告業界を目指すわけではなく、例えばGoogleやFacebookだったり、もしくは起業する人だって出てくるでしょう。そんな人材を引き寄せられるパワーとカルチャーを持ち合わせている広告エージェンシーが、今後成長していくんでしょうね。もちろん他の職種の存在を無視しているわけではありません。ただ今後、よりデジタルな方向にコミュニケーションが進んでいけばいくほど、クリエイティブなアイディアをどうやってデジタルに落とし込むのかというエクゼキューション(実行)の部分を理解できる人材が広告エージェンシーにとって物凄く重要になるでしょう。

再び、AKQAのレイ・イナモトさんの記事で関連する箇所を抜粋させて頂きます:
「アイデア」がどうシェアされ、なぜシェアされるかを可能にするのが「エクゼキューション」。この2つを切り離しては、いくらいいアイデアが思いついたとしても、実現性がない。アップルの製品が「ソフト」と「ハード」の融合を大切にしているように、広告代理店も「アイデア」と「エクゼキューション」を融合しなければ、今後難しい状況になるだろう。


て、次回インタビューレポートを行うエージェンシーは、今回の記事で何度か触れたサーチ&サーチにしたいと思います。70年代からスウェーデンとアメリカの両方の広告業界で働いてきたCEOのハンス・シードウさんにお話を伺うことができましたので、しばしお待ちを!