2012/07/29

curation #2: ダークナイト・ライジング銃乱射事件/北欧的幸福感から学べること


アメリカ・コロラド州にある映画館で起きた銃乱射事件に関する記事です。バットマンシリーズ最新作「ダークナイト・ライジング」のプレミア上映会で、3つの銃を持った若い男が劇場に入り、銃を乱射。結果、12人が死亡し、58人が重軽傷を負ったという信じがたいニュースを受けて、とても重要な指摘をしているこのブログ記事の一部を抜粋します:
今回の事件を受けて銃規制の議論は少しは進むのでしょうか。それとも銃規制議論の前に表現規制の議論になってしまうのでしょうか。今回の事件の発生場所は単純に暴力描写にフィンガーポイントしたい人間からしたら最高でしょう。しかも自分をジョーカーだと言っているという証言も出て来ている。本質的な銃規制の前にまたしても不毛な表現規制の話が横行するのだと本当に悲しい。

暴力的なメディアが受け手を暴力的にする、という弾丸理論(皮下注射効果モデル)はメディア研究の歴史の中で様々な形で批判されてきましたが、未だに社会の通念として残っているのは興味深いです。私も、このブログの筆者と同意見で、表現規制の議論をする前に考えなければいけないことは沢山あるんじゃないかなと思っています。犯人がなぜ犯罪を犯したのか、バットマンでなくとも別の要因が事件の引き金を引く可能性はあったのではないか、家庭内で問題はなかったのか、アメリカの異常な銃社会を厳しく取り締まる必要はないのか、銃のない社会をどう作り上げるべきなのか、など問うべきことは色々あるあるかと。真の問題が覆い隠されてしまうことだけは回避されるべきです。(ちなみにLA Timesによると、銃乱射事件の直後、コロラド州では銃購入希望者が急増したそうです…。)



【特別対談】 本田直之×関根健次
前編:あなたは、幸せを感じる「スキル」を持っているか? 
後編:本人は、選択肢が多すぎることに気づいているか? 

- DIAMOND online 7/13/2012, 7/20/2012


レバレッジシリーズでおなじみの本田直之氏と社会起業家の関根健次氏による「幸せとは何か?」をテーマにした対談。本田氏がつい最近出版した『LESS IS MORE 自由に生きるために、幸せについて考えてみた。』という本では、幸福度ランキングトップの北欧の人々と幸福について語り合った内容がまとめられています。そのためこの対談でも、しばしば北欧絡みの話が出てくるのですが、「確かに!うんうん。」と頷きながら前編・後編楽しませて頂きました。その中でも特に見習いたいと思ったのは次の箇所:
本田氏:僕が今回旅した北欧でも、多くの人がモノにあまり興味がないんです。誰かに「いまほしいものは何ですか?」と聞いても、物質的なものがほしいという人はほとんどいない。「子どもが幸せになってほしい」とか、「家族がみな健康でいてほしい」といった利他的なものばかり。たとえ自分のための欲求だったとしても、「旅がしたい」といった体験的なものだったりするんです。彼らが言っていたのは、「日本は選択肢が多すぎるんだよ。誰かと比較することで幸せ感を作ってしまっているじゃないか」ということ。(…) 北欧はたしかに先進国ではありますが、日本みたいにあれもこれもあるわけじゃない。遊び場だって少ないから、平日は家と会社の往復が基本。その分、週末はサマーハウスで過ごすといった感じ。つまり、人生を楽しむための選択肢がものすごくベーシックなところにあるんです。のんびりしているというか。

確かに、スウェーデンに住んでいる時によく感じたのは、遊ぶところにしても食べるものにしても、選択肢が少ないこと。けど、人生を楽しむための選択肢がものすごくベーシックなところにある」というのは納得で、私の場合、夏には携帯の電波が入らないサマーハウスでのんびり過ごしたり、田舎のログハウス(しかもトイレは外に独立して設置してあるぼっとん便所)を借りてベリー狩りをしたり、船で近場の島に渡って読書しながら日光浴をしたり…。冬であれば、家で映画を見たり、ホームパーティーをしたり…。夏であれ冬であれ、ストックホルムの街をただのんびり散歩するだけでも、そして真っ青な空を眺めているだけでも、私は幸せを感じていました。(青空に感謝したくなる気持ちになったのは、人生で初めてだったかもしれません…。)

更に記事から抜粋します:
関根氏:映画『happy』では、いろんな人が幸せについての定義をしてくれているのですが、ある人は「幸せは温度差だ」と言っています。つまり、温度差の違う世界を行ったり来たりできるか。たとえば、アルピニストの野口健さんは「山から帰ってきてコンビニに行くとものすごく幸せを感じる」と言っていました。そうしたギャップを普段の生活の中で感じられるかということ。当たり前のことを当たり前と思わない機会を持てるか、ということかもしれません。 
本田氏:つまり、日本人は満足の閾値が上がってしまっている。だからこそ、あえて移動したりあえて自分自身を制限された環境の中に置いたりすることで、自分が持っている選択肢にありがたみを感じることができる。
この中の「幸せは温度差だ」という言葉には、ハッとさせられました。ストックホルムに住むことで東京との温度差を(良い意味でも悪い意味でも)感じることができたのは事実ですし、そこに、今の自分にとっての幸せの価値観とは何なのかを考えるためのヒントが隠れているような気がします。単純に身近な人と比較して自分の幸福度を確かめるよりも、色んな世界を見て、色んな人に出会って、色んな価値観に触れて、その時の自分の状況に応じて「幸せとは何なのか?」を前向きに考えられる人間になりたいものです。