2010/10/05

ノーベル博物館で核軍縮について考える。

核問題に精通している3名の方を招いたディスカッションが先日ノーベル博物館で行われ、参加してきました。

その3名とは、核軍縮に関するオバマ大統領のアドバイザーを務めるスタンフォード大学の教授、世界で一番古い平和団体のプレジデントとして活躍する若い女性、そしてスウェーデンの外務省で核問題に取り組んでいる男性。

数週間前の、広島原爆を生き延びた女性の体験談とは全く違ったアングルから核について学ぶことができて非常に貴重な体験でした。


まずはそれぞれの方の話の中で個人的に印象的だった部分を紹介します:

【オバマ大統領アドバイザーの言葉】
オバマ大統領は特に実績を残したわけでもないのに、なぜノーベル平和賞を授与されたのか、と様々な形で非難を受けたが、彼の核軍縮・核不拡散に対する強い信念は学生時代から全く揺らがないことは確かである。決して選挙で有利になるための主張ではないし、むしろアメリカ人の多くはアメリカが核を放棄すべきではないと考えているくらいだ。だが、大統領が変われば方針も変わるかもしれない。近い将来オバマが何かしらの行動を起こさなければこの問題はまた先延ばしになる。

【平和団体のプレジデントの言葉】
私は冷戦を肌で感じたことはないし、核の恐怖を知らない。若い世代はそういう人達ばかりだろう。しかしそんな私達もこの核問題には立ち向かわなければならない。そんな中、よく年配の方々は「社会の未来は君たち若者の手にかかっている」と言ってくるが、もうその言葉にはウンザリしている。あなた方が作った問題でもあるんだから、一緒に解決策を探しましょうよ。
・最近はソーシャルメディアの活躍が目覚しい。しかし政治的なサポートがなければその行動も意味を成さない。政治家にも協力してもらった上で市民社会の声を大きくし、核軍縮を目指そう。

【スウェーデンの外務省で働く男性の言葉】
今グローバルな問題は大きく二つある:地球温暖化と核軍縮。しかしどちらのほうが注目を浴びているかと言われれば間違いなく前者であろう。だが核軍縮も同様に非常に切実な問題であり、直ちに解決に向けて取り組む必要がある。


続いて、Q&Aの一部を紹介します:

【核軍縮と民主主義の関連性について】
核問題を取り上げる際によくイランや北朝鮮、イスラエルなどの国名が挙げられる。しかし核に手を染めているという意味ではアメリカやフランス、イギリスだって同様に非難されるべきだ。核を保持して他国に恐怖を与えているような国を民主的と呼べるだろうか。当然、イランや北朝鮮のような独裁者がいる国と民主主義の国をそう簡単に比較することはできないが、まずはアメリカなどが核軍縮に踏み切らないと何も始まらない。また、核の生産に莫大な金をかけることが本当に国益に結び付くのだろうか。金の他の使い道を真剣に考える必要がある。

【核が無くなったらどんな世界になるか】
・核保持国家が再び現れないよう国のみならず市民社会も一緒になって世界を監視することになるだろう。
 ・権力の象徴や脅迫の武器としての核が無くなれば、日本や韓国などがアメリカに頼り続ける必要はもはやなくなるだろう。
 




ここからは、私の勝手なぼやき。

日本人の若者の核軍縮とか核不拡散に対する意識ってどうなんだろう。他国と比べたらやっぱり意識は高くあるべきだと思うのだけど。
広島と長崎が人類史上初めて核兵器が実戦使用された都市であるという知識は持っているとしても、今この社会において核の危険性を感じることってまずないですよね。北朝鮮についてはメディアが必要以上に騒ぐ時だけ恐れちゃうのかもしれませんけど。

私自身も正直このディスカッションを聞くまでは核問題に対する意識は低かったです。お三方の話を聞いてからは、核の存在そのものがバカバカしく感じるようになりましたが。そんな中、ちょっと思ったことは3つ:


①核の製造や保管に必要な知識、技術、物質、土地、人材にかかる莫大な金の他の使い道を考えてみない?平和な世界を築くことも不可能ではないと思いますが。


②まずはアメリカやイギリスが核を放棄しないとイランや北朝鮮に制裁するにも説得力無いんじゃない?ダブルスタンダードをやめましょうよ。


③ もしアメリカが核を持たなくなったら、日本は本当の意味で独立できるのかな?よく考えたら、日本は核の被害を受けながらも、今はアメリカの核に守られてるんですよね。なんかちょっと気持ち悪い。


…とまぁ大して深い問いでもないし楽観的すぎるけど、これからは核に関するニュースにもうちょっと耳を傾けてみることにしよう。メディアも地球温暖化問題くらい核問題を私達の身近な問題として真剣に取り上げて欲しいけど。報道トピック的にはタブーなんだろうけど、やっぱりメディアの果たすべき役割は大きいと思うし。…と言いつつも、今の日本のマスメディアには期待できないな。フリージャーナリストや週刊誌や海外のジャーナリストに期待してみよう。



最後に、核に関するフリージャーナリスト岩上安身氏のツイートを紹介。
さっきたまたま発見。これから日本でどんな動きがあるのか楽しみだな。


岩上安身 (iwakamiyasumi):
核についてのまともな戦略論もなしに、核の製造、保有、使用の議論がなされることに、強い疑念。チェイニーはじめ、米国のウルトラタカ派の政治家から、「日本も核を持てばよい」といった発言が出ることも、ますます疑わしい。今に始まったことではないが、日本はいいように操作されている。
http://twitter.com/iwakamiyasumi/status/26377309431