2011/08/03

110kmにも及ぶ世界一長いアート展inストックホルム。

110kmにも及ぶ世界一長いアート展。
これが実はスウェーデンの首都、ストックホルムの地下鉄にあるんです。
というよりも地下鉄そのものです。

ストックホルムに初めて地下鉄が敷設されたのは1933年にまで遡りますが、
実際にアートが導入され始めたのは1957年
それ以前に19世紀頃から、アートは美術展覧会に足を運べない一般市民に
対しても開かれたものにすべきだという議論がなされていたそうです。

現在、ストックホルムメトロは100駅ほどありますが、
そのうち90駅以上がアート展と化しています。

つい最近、このメトロアートを紹介する無料ツアーがあることを知り、
参加してきました。(英語ツアーは夏期限定、スウェーデン語ツアーは年中実施)
ボランティアガイドが1時間で4駅案内してくれたのですが、
実際には90駅以上あるので、全て制覇するには23回ほど参加しないといけないことに
なるでしょうね…。

ということで私が参加した時に回った駅のご紹介です:




①ストックホルム中央駅(1957)T-Centralen
これがメトロアートの中でも最も古いもの。



ここは12人のアーティストによってデザインされたのですが、
恐らく一番印象的なのは右上の写真の、タイルで敷き詰められた壁。
広告物など一切なく、美しいです。
下の二枚は、黒い柱に施された絵(左は原子シンボル?)なんですが、
こんなものが彫られていたことに今まで全く気付きませんでした。
ちょっとした発見。



②ウステルマルムストリ駅(1965)Östermalmstorg
カタカナで書くと異様ですね、この駅名。
ここはメトロ駅の中でもかなり深い所に位置するらしいです。


Siri Derkertによるアート作品で、主なテーマは女性解放運動や平和運動だそうです。
しかしよくコンクリート壁に文字や絵を打ち込みましたね。
大変だったんじゃないかな…。
彼女は当時すでにおばあちゃんだったらしいんですけどね。
お疲れ様でした。



③ウニベルシテーテット駅(1998)Universitetet

この駅もまたカタカナにすると奇妙ですね。
「大学」という意味で、ストックホルム大学などがある駅です。



まだ10年ちょっとしか経っていない比較的若いメトロアート。
アーティストはフランス人です。

左下のアルファベットが沢山敷き詰められている写真ですが、
実はこれは世界人権宣言をスウェーデン語にしたものなんです。
ずっと気になっていたので、スッキリしました。
これと似たアートが、パリの駅でも展開されているとのこと。

その他の写真は、分類学の父であるスウェーデン人カール・フォン・リンネ
旅行記などを参考にしたアートです。

これがなかなか細かくて面白い。
右上の写真は、チェルノブイリ原発事故後に放射性物質が風向きの影響で
どのように北欧に流れてきたか、が描かれています。
(ですがリンネとの関連性はよくわかりません)

右下の二枚の写真ですが、これはリンネの弟子たちが植物等の調査のために
どのようなルートで世界中を旅したかが記されています。

そこでちょっと驚いたのが、カール・ツンベルクという弟子のルート。
なんと、日本が含まれているんです。
折角なので、ガイドさんの説明とウィキペディアの説明で彼のことをちょこっと紹介。

当時の日本は江戸時代で、鎖国政策のため貿易が制限されていた頃。
ですが李氏朝鮮、琉球王国、中国、そしてオランダとは例外的に交流がありました。

当然スウェーデン人は受け入れてもらえないため、
ツンベルクはまずオランダへ渡り、オランダ語を徹底的に身につけます
そして長い年月を経て日本に辿り着いた後、オランダ商館付の医師として、
出島に赴任することになったそうです。
滞在期間は1年だったそうですが、出島の三学者の一人に数えられ、
また、日本植物の基礎を作った
とのこと。

その後、スウェーデンのウプサラ大学の学長に就任したのですが、
彼が在日中に採集した植物の標本は今でもこの大学に保存されているそうです。


長くなってしまいましたが…。
スウェーデンと日本の繋がりについて、なかなか面白い発見ですよね。



④スタディオン駅(1973)Stadionこの駅名は「スタジアム」という意味です。

 

レインボーのペイントがなかなか素敵ですよね。(意味はわかりませんが)

そして真ん中の写真は、1912年ストックホルムオリンピックを記念したアート。
(実際にこれが当時のポスターとして使用されていたかは知りません)
なぜそんなものがあるかというと、ここには当時オリンピックのために作られた
スタジアムがあるからなんです。
もうすぐ100年経つんですね…。


ということで、以上、メトロアート4駅の紹介でした!

東京の地下鉄もこんな工夫をしてくれたら、嬉しいな。




参考サイト:
Wikipedia - カール・ツンベルクWikipedia - 鎖国
ストックホルムメトロアートツアーについて(スウェーデン語)