2011/07/04

ジェンダー差別の排除を目指すスウェーデンの幼稚園。



「女の子は可愛らしく、男の子はタフであるべき、というのは私たちの社会が期待すること。けどこの幼稚園では、なりたい自分を子供たち自身に描いてもらう機会を与えている。」

そう答えるのは、Egalia幼稚園で働く31歳の教員。この幼稚園では、ジェンダー差別の排除を目指すことが重要な教育方針とされているのです。

税金で賄われているこの幼稚園は、1〜6才の子どもを対象に、昨年スウェーデンの首都ストックホルムに開園しました。男女の役割に関する固定概念を崩していこうとする試みは、スウェーデンの幼稚園における教育課程(カリキュラム)の核となるミッションです。多くの幼稚園では「ジェンダー教師」なるものを雇い、子供たちを教育する際に、教員自身が男女に対するステレオタイプを言葉や態度で示さないように「教員を教育」することまで行われています。


その中でも、Egalia幼稚園は特に急進的なほうだとされています。そもそもEgaliaという単語は、「Egalitarian = 平等主義」という英単語から来ています。ここの教員は「彼」「彼女」という言葉の使用を避け、33人の子供たちを「男の子」「女の子」ではなく「おともだち」と呼んでいます。スウェーデン語では「彼」=「han」、「彼女」=「hon」ですが、ジェンダーレスの単語としてこの幼稚園では「hen」というスウェーデン語の辞書にはない言葉を使用しています。

更に興味深いのは、ゲイ・レズビアン・バイセクシュアル・トランスジェンダーの人々を受け入れるための環境作りに特に力を入れている、という点。そのため、この幼稚園の本棚には男女のステレオタイプを強調する「白雪姫」「シンデレラ」などのおとぎ話の絵本はありません。その代わり置いてあるのは、同性カップルやひとり親家庭、または養子を題材として取り上げた本ばかり。(子どもが出来なくて寂しがっているオス同士のキリンカップルのお話などあるそうです)

このような特殊な教育方針は国内外で物議を醸しており、マインドコントロールではないか、と主張する人もいます。しかし、入園希望者は後を絶たない様子。

Egalia幼稚園では決して男女の生物学的な違いを否定しているわけではありません。理事長のRajalin氏はこう語ります。

「大事なのは、生物学的な違いは男女の趣味や能力を決定づけるものではないということを、子供たちが理解するということ。これは民主主義、そして人類の平等に関わることである。」


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ご紹介したのはHuffington Postの記事。なかなかラディカルなことをする幼稚園ですね。

しかし、生徒33人(+教員)という非常に小さいコミュニティの中だけで「彼」「彼女」「男の子」「女の子」という言葉を無くすことにどれだけの意味があるのか?はっきり言って疑問です。

この子供たちを監禁して実験してみる(なんてあり得ないですけど)ならともかく、外の社会に触れてしまえば、避けることのできない言葉です。ましてやこの特殊な幼稚園を卒園したら彼ら・彼女ら(おともだちら?)はどうなるのでしょうか。全く異なる教育方針を抱える小学校に入学すれば子供たちは困惑しそうです。そしてテレビや映画などのメディアに触れる機会も増えれば、「ジェンダー」に対する考え方が多様化せざるを得ないでしょう。

男女の役割に関する固定概念を崩す、というスウェーデンの幼稚園教育の試みには賛成
ですが、まずは、今私たちが暮らす社会の良い部分や悪い部分などを多様な角度から子供たちに理解してもらうことを教員(そして親)が心掛けることが大切だと思います。そして、その中で子供たち一人ひとりが思い描く理想の自分、理想の社会を目指してアクションを起こせるようにサポートしてあげる、というのが重要な気もします。(って1〜6才の子どもに対して求めすぎ?)

…ということで「白雪姫」や「シンデレラ」も本棚に並べ、このおとぎ話が描くステレオタイプについて子供たちに考えさせることも必要なのではないでしょうか。



参考記事:
1. Huffpost Education
Gender Bias Fought At Egalia Preschool in Stockholm, Sweden (6/26/2011)

2. Stockholms Stadのサイトより写真引用