SFF#5: Monsters
Director:
Gareth Edwards
Cast:
Scoot McNairy and Whitney Able
【予告編】
粗筋:
とある事故がきっかけでメキシコに地球外生物が生息し始め、一部の地域は感染エリアとして隔離されていた。そんな非常事態の中、フォトジャーナリストのアンドリューは、メキシコから逃げ遅れた上司の娘を無事アメリカへと帰国させるという使命を与えられる。
感想:
「またアメリカの宇宙人映画かよ」と思うかもしれませんが、いわゆる派手なハリウッド映画ではなく、良い感じの手作り感が出ていて、尚且つ色んなメッセージが込められているので見応えありましたよ。
まず、監督は単に宇宙人を悪として描こうとはせず、むしろその「悪」というイメージがいかに人間から押し付けられたものであるかを伝えようとしている映画だと私は感じました。私たちのテロリストに対するある種の偏見と重ね合わせることができるかもしれません(…と似たようなことをQ&Aセッションで監督が言っていたような気がします)。
そして映画の中でアメリカはメキシコとの国境に巨大で頑丈な壁を築き上げて地球外生物の自国への侵入を防ごうとするのですが、これはまるでメキシコを見捨てるかのような描き方で、なかなか面白い(また、メキシコからアメリカへのの移民流入問題を示唆しているようにも見えるのですが、監督曰くそれは意識していなかったとのこと)。
最後に主人公のアンドリューについてですが、彼はフォトジャーナリストなのでひたすら写真を撮りまくる。そしてもちろん、宇宙人を間近で撮影できるというのは滅多にないチャンス。けれども、彼はちょっとシニカルな人間なんです。結局上司が求めてるもの、読者が求めてるものは悲劇を伝える写真。そこで彼がこんなセリフを口にします:
A picture of a suffering child is worth 50,000 bucks, but a picture of a smiling child is worthless.(苦しんでいる子供の写真は5万ドルの価値があるが、笑顔の子供の写真には価値が無い。)
マスジャーナリズムの現状が痛いほど伝わってくるセリフでした。
…ということで、普通の宇宙人映画とは一味違った、色んなサブテキストが含まれた作品だと思います。
ちなみに、この映画は主人公二人以外全員素人。撮影地の住人やら通りすがりの人やらメキシコ政府から派遣されたボディガードやら(ちなみにボディガードの人件費は国が負担、というかボディガードを派遣する必要があるほどの危険地域で撮影したということです)。撮影クルーも片手で数えられるほどで、実際に監督もカメラを持ったりしたそうです。決して低予算映画とは言えませんが、でもそのリアルさはなかなかのものです。